遺言書の取扱い

遺言の基本的な考え方

お亡くなりになった方が遺言を書いていた、お亡くなりになった方から遺言を預かっている、というご相談が最近増えてきました。新聞やテレビなどで、終活やエンディングノートのことが取り上げられ、遺言についても注目が集まっている影響もあるかもしれません。亡くなった故人が遺言を書いていた場合、その遺言の取扱いには十分に気をつける必要があります。遺言がのこっていた場合は、相続人は遺言に従った内容で財産を相続します。つまり、亡くなった方の意思が尊重されるのです。

そのため、相続が発生した際には、まずは遺言があるかどうかを確認します。表題に「遺言書」と書いていない場合や、封筒などに入っておらず自筆で走り書きされた書類についても遺言とみなされる可能性もありますので、書類は大切に保管しておく必要があります。遺言をやぶいて捨ててしまったり、遺言を隠したりすると、相続人となることができなくなる場合(相続欠格)もありますので、注意が必要です。遺言が見つかったら、遺言を預かっていたら、まずはそのまま封を開けずに大切に保管し、専門家に相談することが重要です。

遺言は故人が残した大切なメッセージです。
以前、重い病気を背負っているなかで、とても苦労して遺言を書いたお客様のお手伝いをさせていただいたことがありました。その遺言には、とても悩んで決めた財産の分配方法などのほか、残された家族への思いや感謝も綴られていました。遺言の形式、内容は人それぞれですが、遺言書は故人のたくさんの思いが詰まっている結晶です。当事務所でも遺言書を扱う際には、そういった故人の思いも大事にして仕事をしたいと考えています。

 

遺言が見つかったら

遺言書が見つかったら、まずはその遺言が自筆証書遺言なのか、公正証書遺言なのかを確認します。公正証書遺言以外の遺言は、すみやかに管轄する家庭裁判所に提出し、検認手続を受ける必要があります。検認手続を受けるまでは、封印されている遺言書は開けずに保管します。

検認手続とは、相続人全員に対し、遺言書が存在することや、遺言書の内容を知らせるだけではなく、その遺言書の形状、日付、署名など、家庭裁判所で検認手続がおこなわれた日時点における遺言書の内容を裁判所が明確にして、遺言書の偽造や変造を防止するための手続です。また封印されている遺言書は、検認手続において開封して中身を確認します。ただし、検認は証拠保全の手続にすぎないので、遺言書の有効・無効、内容の調査などを判断する手続ではありません。つまり、検認を受けたからといって、その遺言が法律的に有効な遺言かどうか保証はされないのです。

しかし、自筆証書遺言など公正証書遺言以外の遺言書は、必ず検認をすみやかに受けなければならず、検認を受けなければ各種の名義変更手続はできません。家庭裁判所の検認の申立は、単純に遺言を持っていけばよいのではなく、戸籍などを添付し、申立書を記入しておこなう必要があります。司法書士は家庭裁判所に提出する遺言の検認申立書の作成をすることが可能です。お気軽にご相談ください。

なお、公正証書遺言の場合は、検認手続が不要なため、家庭裁判所に提出する必要がありません。公正証書遺言は公証人が作成したものなので、偽造されたりすることがないからです。

Point遺言書が見つかったときは、封がされている場合は開けずに大切に保管しましょう。

Point自筆証書遺言はすみやかに家庭裁判所に提出し、検認手続を受けます。

Point検認申立書の作成を司法書士に依頼することも可能です。

Point公正証書遺言は家庭裁判所に提出し検認手続を受ける必要はありません。

 

遺言の種類

自筆証書遺言とは、文字通り作成者が紙に遺言内容、日付、氏名を筆記して、これに押印する作成方法です。自分で自筆で記載する紙は何でもかまいませんが、ワープロや代筆などは認められていません。すべて必ず自分で書く必要があります。

1.自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、文字通り作成者が紙に遺言内容、日付、氏名を筆記して、これに押印する作成方法です。自分で自筆で記載する紙は何でもかまいませんが、ワープロや代筆などは認められていません。すべて必ず自分で書く必要があります。

メリット
  • どこでも簡単に手軽に作成できる。
  • 費用がほとんどかからない。
  • 何回でも書き直す(あらたに作成)することができる。
デメリット
  • 紛失する可能性がある。
  • 様式違反などにより遺言書としての効力がない場合がある。
  • 死亡した後、家庭裁判所で検認手続を受ける手間と費用がかかる。
2.公正証書遺言

公証役場で証人2名の立会いのもと、公証人によって作成されます。

メリット
  • 改ざん、紛失のおそれがない。
  • 死亡後の検認が不要である。
  • 公証人が作成するため、内容的にもしっかりしたものが作れる。
  • 自筆証書遺言と比べ信用力が高い。
  • 確実に遺言が残せる。
デメリット
  • 作成の際に費用と手間がかかる。

その他の遺言の形式としては、秘密証書遺言、死亡危急時遺言などもあります。

Point遺言が見つかった場合、遺言を預かっている場合は、その遺言がどの方式の遺言になるのか確認します。自筆証書遺言は開けずに家庭裁判所に検認申立をします。

Point遺言を書く際にも、どの形式の遺言を書くかは慎重に決める必要があります。

Point自筆証書遺言を書くときには、記載方法など注意して書きます。心配であれば書く内容や書いた文章を司法書士に見てもらいましょう。

 

遺言による不動産の名義変更

亡くなった故人が遺言を残している場合、相続人は遺言に従った内容で財産を相続します。自筆証書遺言の場合は、相続手続をする前に家庭裁判所で検認手続が必要です。内容に問題がなければ、検認済の遺言書を用いて不動産の名義変更することが可能です。公正証書遺言の場合は、検認手続をすることなくその遺言書を用いて不動産の名義変更が可能です。

不動産の名義変更については、遺言書の内容によりますが、相続人全員に対しての遺言であるのか、一部の相続人に対しての遺言であるのか、相続人以外の者への遺言であるのかにより、登記の内容も変わってきます。「相続」ではなく「遺贈」として登記されるケースもあり、遺言書の内容によって登記の申請人や必要書類も変わってきます。

Point自筆証書遺言の場合は登記申請に先立って家庭裁判所の検認手続が必ず必要です。

Point公正証書遺言の場合は、家庭裁判所の検認なしで登記申請が可能です。

Point遺言書の内容によって、「相続」なのか「遺贈」なのか、誰が登記申請人となるのか、添付書類として何が必要なのか変わってきます。司法書士に相談して遺言書の内容をよく確認してみましょう。

 

遺言書を利用した預貯金の名義変更

遺言書を利用した預貯金の解約・名義変更手続も不動産と同じ考え方です。

  • 遺言がある場合は、遺言に基づいた内容で預貯金の解約・名義変更などが可能です。
  • 自筆証書遺言であれば、家庭裁判所で検認手続を済ませてから使用します。
  • 公正証書遺言であれば、検認なしで使用できます。

遺言書とともに、以下の書類を金融機関に提出し、預貯金の解約や名義変更手続をおこないます。

  1. 遺言書(コピーでも可能)
  2. 被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本
  3. 相続人の戸籍謄本と印鑑証明書
  4. 被相続人の預金通帳と届出印

※ 戸籍などの提出の代わりに法定相続証明情報を提出することも可。

司法書士は遺言書の検認申立書の作成業務が可能なほか、預貯金の解約・名義変更手続を代行してすることも可能です。

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