相続の基礎知識
相続とは何か
人がお亡くなりになると必ず相続が発生します。誰もが経験する、避けては通れないものです。
相続とは、亡くなった方の財産や負債・借金、権利義務がだれかに移ることをいいます。
法律上、亡くなった方を「被相続人(ひそうぞくにん)」と呼びます。一方、亡くなった方と一定の親族関係にあって、亡くなった方の財産などを受け継ぐ者を「相続人」と呼びます。
そして、相続の対象となる財産などのことを「相続財産」といいます。相続財産という言葉は、「遺産」という言葉とほぼ同じ意味で一般的に用いられています。
また、亡くなった被相続人が生前に遺言を書いた場合は、自分の選んだ者に財産を引き継げる自由も一定限度で認められています。
相続が発生したら
人は誰でもいつかは亡くなります。
相続が発生したとき、まず一番に考えることは、相続を受けるのか、受けないのか、ということです。相続人は、相続を受けることも、受けないことも認められています。相続を受けたくなければ、相続放棄をすればよいのです。
亡くなった方の相続財産(遺産)が、現金預貯金などのプラスのものよりも、借金などのマイナスのもののほうが多い場合などは、相続しないことを家庭裁判所に申し出ることができます。これを「相続放棄」といいます。
相続を受けたくないのであれば、被相続人が亡くなったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申し出なければなりません。この期間を過ぎてしまうと、自動的に相続を受けることになってしまいます。そのため、まず第一に考えるべきなのは、相続を受けたいのか、受けたくないのか、を考えることです。
相続を受けたくない、相続放棄をしたい、と考えられている方は、相続放棄に関するページをご覧ください。
こんなにある相続手続
相続を受けると決まったら、いろいろな機関の手続をしなければなりません。
死亡届からはじまり、火葬許可申請、世帯主変更届などの基本的な手続から、電気・ガス・水道などの名義変更、年金手続・死亡保険金の支払請求などもおこないます。ほかにも預貯金の解約、不動産や株の名義変更なども必要となってきます。こういったたくさんの手続をひとつひとつおこない、すべての手続が完了してようやく相続手続がすべて完了することになります。
当事務所では、必要となる相続手続の一覧をまとめたパンフレットをお越しいただいたお客様に無料でお渡ししておりますので、ご希望の方は当事務所までご相談ください。
主な相続手続の流れ・スケジュール
相続手続について期限があるものは以下のとおりです。遅れずに手続をしましょう。
7日以内 | 死亡届・火葬(埋葬)許可申請書の提出 |
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3か月以内 | 相続放棄の申述書を家庭裁判所に提出 |
4か月以内 | 準確定申告の申告期限 亡くなった方が確定申告をしていた場合に、亡くなった年の1月1日から死亡日までの期間の計算をします。 |
10カ月以内 | 相続税の申告期限 |
その他の相続手続について考える時期のおよその目安
親族が亡くなってすぐ |
※相続放棄を考えられている方はこちらをご覧ください。 |
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1か月~2か月程度 |
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3か月以降 |
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※相続のスケジュールはある程度の目安です。お客様それぞれのご事情によりスケジュールは異なりますので、お気軽に当事務所までご相談ください。
誰が相続人なのか
遺言の調査
まず遺言がある場合は、基本的には遺言が優先されますので、遺言が手元にあるかどうか、手元にない場合は遺言の調査をおこないます。被相続人が自分で書いた遺言は封印されている場合はあけずに家庭裁判所に提出する必要があります。遺言がある場合は、こちらのページで詳しく説明しておりますのでご覧ください。
相続人の調査
また、相続人の調査も、まずはじめにしなければならない重要なことです。相続人の調査は、亡くなった方(被相続人)が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍謄本をすべて集めて、戸籍に書いてある文章をすべて熟読し、内容を確認する必要があります。戸籍を調査してみたら、前妻との子供がいることがわかった、養子縁組をしていることが判明した、となることもあります。そのため、被相続人の戸籍調査を完璧におこなう必要があります。戸籍収集は非常に煩雑な手続になりますので、ご依頼いただければ司法書士が代理で取得することが可能な場合もございます。
誰が相続人になるのか
遺言などがなければ、亡くなった方の相続人が相続財産を引き継ぎます。
戸籍の調査が終了したら、だれが相続人であるか確認します。
基本的な相続人の考え方は以下のとおりとなります。
配偶者 | 常に相続人になります。 |
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子(養子含む) | 第1順位の相続人。 |
直系尊属(被相続人の親など) | 第2順位の相続人(第1順位の相続人がいない場合に相続人となる) |
兄弟姉妹 | 第3順位の相続人(第1順位・第2順位の相続人がいない場合に相続人となる) |
※子のうち1名が被相続人よりも先に亡くなっており、被相続人から見て孫が相続人となる場合もございます。
代襲相続
被相続人が亡くなった後、相続手続をおこなわないまま相続人が亡くなってしまうことを二次相続、数次相続といいます。
代襲相続、二次相続は相続関係が複雑になりますので注意が必要です。こういった場合は、専門家に相談することをおすすめします。
相続人がだれなのか、だれと話合う必要があるのかといった判断を間違えていると、相続手続はおこなうことができません。戸籍調査をおこない、だれが「相続人」となるのかはっきりと区別をしましょう。
相続関係が複雑で、誰が相続人になるのかわからなければ、お気軽にご相談ください。
相続手続に必要なもの
相続手続に必要な書類は、提出先により異なります。主に必要となる書類は以下のとおりです。各機関により必要書類は異なります。司法書士が代理で取得できるものもございますので、お気軽にご相談ください。
亡くなった方(被相続人)のもの | 戸籍謄本 除籍謄本・原戸籍謄本 住民票 死亡診断書 手帳・証書・通帳など |
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相続人の方のもの | 戸籍謄本 住民票 印鑑 印鑑証明書 運転免許証など本人確認書類 |
※各相続手続により必要なものは変わってきます。詳しくは提出機関に直接確認いただくか、当事務所までご相談ください。
相続税はどうするの?
当事務所は司法書士事務所です。具体的な税額の計算、申告が必要となるかの判断はできません。これらは税理士等他資格の業務となります。必要により税理士等他資格者をご紹介いたします。
相続手続をする際、必ず皆様が気にされるのが相続税を納める必要があるかどうかです。相続税の基礎控除などの基礎的な考え方を理解していただいたうえで、申告が必ず必要となりそうな方、金額が微妙なケース、評価方法などが難しいケースなどは必ず税理士に相談されることをおすすめします。
平成27年1月1日から相続税の基礎控除額が引き下げられたため、相続税の申告を気にされるお客様が非常に増えました。ご自宅以外に土地建物がある方、ある程度まとまった預貯金がある方、多額の生命保険金・損害保険金を受け取った方などは、相続税のことを一度ゆっくり考えてもよろしいかもしれません。
相続税の計算は非常に複雑で、専門家に依頼しなければ難しいケースがほとんどです。当事務所では、信頼のおける税理士を紹介することも可能です。
まずは相続税の基礎的な考え方を見ていきましょう。
相続税のしくみ
相続税は、相続または遺贈により財産を承継した場合に、相続人に対して課税されます。
ただし、相続税には基礎控除があるため、遺産などの評価額の合計金額が基礎控除の金額以下の場合は、税務署に申告が不要となり、相続税もかからない場合があります。
基礎控除を超える場合でも、申告をすることにより税務上の特例(配偶者の税額軽減・小規模宅地の特例)を受けられる場合もあります。
相続税の課税対象
相続税の計算をする際には、どの財産を計算に含めるのかといった判断が重要です。
1.本来の相続財産(プラスして計算します)
(例)土地、建物、株、社債、出資金、商品、売掛金、機械、器具、骨董品など
2.みなし相続財産(プラスして計算します)
(例)生命保険金、損害保険金、死亡退職金など
3.生前の贈与財産(プラスして計算します)
(例)亡くなる直前に贈与してもらった金銭など
4.未払いの医療費、未払いの固定資産税・住民税、葬式費用など(マイナスして計算します)
(例)買掛金、未払い所得税・固定資産税・住民税・医療費、葬式費用など
5.非課税財産
(例)お墓、香典、永代供養代、生命保険金・退職手当金のうち一定額
相続税評価額の算出
相続税の課税対象について計算に参入する際には、単純に時価で計算するのではなく、相続税法・国税庁通達などに基づいた相続税評価額をもとにして計算します。
この相続税評価額の計算が、相続税の申告で一番難しく、ポイントとなる部分です。税理士の報酬などを考えて自分で相続税の申告をしようとされるお客様もおります。もちろんご自分で頑張って計算して申告することも可能ですが、高度に専門的な知識が必要とされるため、やはり相続税の申告は税理士など専門家に任せることが安心です。当事務所でも税理士の紹介は可能です。まずはお気軽に税理士に相談をされてみてはいかがでしょうか。
建物の評価方法(自宅用か貸家か)、上場株式・未上場株式の評価方法、生命保険金の非課税枠の計算、骨董品、ゴルフ会員権など、遺産の評価方法は常に専門知識が必要です。税理士に相談をしましょう。